書評



私が読んだ本の書評です。ギリシア関連の書籍を中心に小説や社会関連書籍などの書評があります。

古代ギリシアの歴史の本:No.1/No.2/No.3
その他の本No.1/No.2
漫画No.1/No.2/No.3/No.4/No.5/No.6

岩波講座世界歴史4−地中海世界と古典文明 本村凌二他 岩波書店
ギリシア・ローマ史関連の論文集 3000円 1998  
岩波講座の世界歴史のシリーズの第4巻。どこの本屋の歴史本コーナーでも見掛ける本である。基本的に論文集なので、やはり初心者向きではない。ギリシア関連の論文は古山正人・本村凌二「地中海世界と古典文明」、桜井万里子「異形のギリシア世界-シチリア」、周藤芳幸「孤立農場論の射程」、橋場弦「民主政の罪と罰」、中村純「舞台の上の民主政」、田村孝「ヘレニズム土着王国の反撃」。いちおう一般向けと言うコンセプトの論文集であるから、註はなるべく少ないようにするという配慮かがされている。

古典古代史 伊藤貞夫 放送大学教育振興会
放送大学の教科書 2204円 1995  
放送大学の授業「古典古代史」の教科書。放送大学でこの授業をとれば無料で送られてくる。本だけほしい場合は教科書だけを購入することもできる。この授業、私は大学2回生のときにとっていた。ただ、全15回のうち半分ぐらいしか勉強しなかったし、単位は取得しなかった。(なぜならローマ史に興味がなかったので。)講師陣はだれも一流の人ばかりで、授業内容もなかなか濃いもので、お勧めできる。古代ギリシア史について勉強したいと思う方はぜひこの授業をとることをお勧めする。社会人でも大学生でも18歳以上であれば、放送大学には授業料を払えば授業をとることができる。

都市国家アテネ ピエール・ブリュレ 高野優 創元社
一般向け教養書 1400円 1997 青柳正規 監修
創元社の「知の発見双書」シリーズの一冊。古典期アテナイの栄光の時代を中心に書かれた本。写真やイラストもふんだんで、しかも内容もなかなか面白く、濃い内容である。アテナイの社会と文化を華やかに書いている。この一冊読むだけで結構アテナイ通になれる。書き方もなかなか興味をそそられる書き方で、ギリシアに興味を持った人が手にとって読みやすい本であると思う。ただ、内容的にペリクレスを中心においているためか、ややペリクレスびいきの感じがする。

西洋古代史研究入門 伊藤貞夫/本村凌二 編 東京大学出版会
研究用の文献ガイド 3914円 1997  
古代ギリシア・ローマ史を学ぶ人は絶対購入すべき本。4000円でも買うべき。西洋古代史の最新の研究動向が分かり、論文や文献がほとんど網羅されている。卒論やその他の研究の必需品。内容は専門的で、大学の3回生以上向きである。古代ギリシア・ローマ史の研究をしようと思う人以外は全く買う必要がない。

西洋古代史料集 古山正人 他 東京大学出版会
古代ギリシアの史料集 2400円 1987  
西洋古代史資料集は大学の歴史の授業でよく使われる本らしい。西洋古代史を学ぶうえで重要な部分を一次史料から抜き出した史料集である。決して資料集ではないから、高校の歴史の授業で使うような写真とか年表とか図などがふんだんに載ったようなものではない。ヘロドトスやトゥキュディデスらの古代人が書いた作品の中から重要な一部分を抜き出して解説付きで載せているのである。ギリシア史の概説書で読んで何か興味を持った部分があったら、そのことが一体どういう記述が残されているのか興味を持つ人も多いだろう。そういう人はたとえばソロンの改革ってどういう史料によって現在まで伝わっているのだろうかと思うなら。これを読めばアリストテレスの「アテナイ人の国制」にソロンの改革について載っているということがわかる。ほかにもいろいろな古代人の記述について触れられることができるのだ。西洋古代史について研究したいという人向けの本。基本的に大学授業用に作られているから、教授による解説を前提にして書かれているためあんまり丁寧に書かれた本ではない。

古代ギリシア・ローマの飢饉と穀物供給 ピーター・ガーンジィ 松本宣郎・阪本浩 白水社
論文 5600円 1998  

去年日本語訳が出たばかりである。内容は穀物供給問題なので、もっぱら小麦だの、大麦だの、飢饉だの、農業だの、穀物輸入だのという話である。私はギリシアのところしか読んでいないので、ローマのところに何が書いてあるのかは全く知らないし、おそらく読んでもほとんど理解できないだろう。ギリシアに関する部分でのもっとも重要な主張は、従来のアテナイの穀物生産量はあまりにも悲観的に見積もり過ぎで、従来はアッティカの穀物生産量では大部分の人口分が自給できずにほどんど輸入に頼っていたといわれてきたが、実際は半分以上は自給できたと主張する。そして、ソロンのころからアテナイは穀物を輸入に頼っていたと考えられていたが、実際は人口が急増したペルシア戦争以後に穀物輸入の重要性が生まれたのであって、それ以前の穀物輸入は頼っていたというほどではないと主張する。この主張のために現在のアテナイ県の耕地面積からの古代の耕地面積の推測や、最新の古代アテナイの人口の見積もりやアッティカの土壌、大麦生産の重要性の強調、従来のエレウシスの初穂の碑文分析の問題点の指摘をとうして立証しようとしている。また、古代の穀物輸入の実態については法廷弁論や碑文史料の分析をとおして、ボスポロス王国からの輸入の重要性について述べている。ずばり、専門書。むずかしい。自分でもちょっともてあまし気味である。


ギリシア・ローマ歴史地図 リチャード・タルバート 小田謙爾 他 原書房
本格的な歴史地図 12000円 1996  
この本は下の人名辞典の姉妹品である。なかなかの優れもので、たくさん地図があるので、大学で発表のときのレジュメ作りに大変便利、地図だけではなくいろいろ解説も載っていて、それも大変参考になる。特にギリシアはポリスの数がこれでもかというほど多いので、本を読んでいるとポリス名がしょっちゅう出てくるが、そういうのがどこにあるかということを調べるのに便利。遺跡の図なども載っている。

古代ギリシア人名事典 ダイアナ・パウダー 編 豊田和二 他 原書房
人名事典 12000円 1994  
古代ローマ人名辞典の姉妹の事典。事典の訳者がいっているように、古代ギリシア関係の日本語の事典はほとんどないといってもいい。であるから、わからない用語があっても欧米の事典を使わなければならない。しかし、人名に関してはこの事典でほぼ調べることができる。ただ、この事典も一万円以上するので、個人で所蔵するにはちょっと不向き、図書館においてあるのを使おう。内容は古代ギリシア史に出てくる主な人物をたいてい網羅しているし、彫刻が残っている人物はその写真付きだったりとかもする。後ろの方に簡単な用語解説もついている。ちょっと人物を調べるときに大変便利な本である。

ファロスの王国−古代ギリシアの性の政治学 エヴァ・C・クールズ 中務哲郎 他 岩波書店
一般向け教養書 上・下とも 2913円 1989  

実はいまだに全部読んでいなくて、面白そうな章だけちょこちょこと読んだ。読んだのは一年以上前なので細部はよく覚えていないが、超過激な本である。この作者のアメリカのフェミニズム歴史学者のクルーズ女史ははっきりいってものすごく過激。まず、シチリア遠征の直前に起こったヘルメス像破壊事件の犯人は誰かという問題提起から始まり、古代ギリシア人にとっての性の認識について述べ、最終的にこの破壊事件の犯人は女たちで、戦争反対のための行動であったと結論づける。はっきりいって、私何ぞはまだまだギリシア史に関しては半人前以下だが、それでもこの結論はむちゃだと思う。そして、例の桜井万里子先生もこのファロスの王国の訳者の人もむちゃな結論だと思っているようである。しかし、そういうむちゃな点をのぞくと、古代ギリシアの陶器に描かれている超過激な性描写が紹介されていて、古代ギリシア人って、こんなすごい絵(男の人と女の人が合体している・・・。)をお皿に描いたのか・・・。とびっくりさせられる。古代ギリシア人にとっての性の問題について正面から扱った非常に面白い本であると思う。ただ、その性の過激さゆえに20歳未満は決して読んではならない。ギリシアの美術って裸が多いし、ヘルメス像なんて一見して「おいおい・・・。」と思っちゃう過激さだけど、なんとなく高尚なイメージもあるが、こんなに性描写が過激だとは意外だった。ぜひこの本を読んで古代ギリシア人の性の認識が現在よりももっと過激であることを知っていただきたい。ギリシア史関係の本の中でもっとも驚かされる本である。ただ、内容の一部はあまりにも過激すぎてついていけないかもしれない。だから私も全部は恐ろしくて読めないのである。


ソクラテスの隣人たち 桜井万里子 山川出版社
一般向け教養書/専門書 2524円 1997  

実は買ってすぐ読んでみて、あまり理解できなくて放り出したままにしておいた本である。一年以上前に買った本だったのを、何の気なしに読み始めたら、はまってしまった。ものすごく面白い本である。まず、この本をソクラテスに関する本と考えてはいけない。あくまで主人公はソクラテスの隣人たち、つまりソクラテスと同時代に生きていた人々が主人公である。ソクラテスに関しては最後にのっているが、このソクラテスに関する話も良くあるソクラテス賛美ではなく、かといってソクラテス批判でもなく、当時のアテナイ市民の視点からソクラテスの裁判を分析しているのが面白い。とにかくこの本を読んだことでペロポネソス戦争の後半から寡頭政、民主政の復活までのアテナイ人の動きが良く分かる。特に寡頭政に関して詳しく述べた本はほとんどないから、そのあたりに関する問題について知ることができる点でも断然お勧めできる。文章も読みやすく、意見も大胆で、かといってむちゃでなく、本当に良い本であると思う。ただ、あくまでも概説書ではない。入門書でもない。面白くて読みやすい専門書である。したがって、基礎的な知識はあるものとして書かれている。したがって、この本を読むのにただ概説書を読んだだけの知識では理解は難しいだろう。とくに一般的な概説書にはあまり詳しくのっていないペロポネソス戦争末期から寡頭政にかけての理解は結構難しいだろう。ギリシア語の単語も結構ごろごろ出てくる。もちろんちゃんと解説はしているが・・・。何といっても読むのに苦労する論文のたぐいや下手な訳の外国の本を読んでいると、やっぱり読みやすい本はうれしい。桜井万里子さんは「古代ギリシアの女たち」や中央公論の「世界の歴史5 ギリシアとローマ」などもそうであるが、文章が読みやすくわかりやすい。文章の読みやすさは大切だ。


歴史 ヘロドトス 松平千秋 岩波文庫
歴史書 上 中620円 下720円 1972  

実はいまだに全部は読んでいない。しかし、何度読んでも面白く、わかりやすい本。古代ギリシア史を学ぶなら必ず読まなければいけない本である。とにかく楽しく、興味を引く話ばかり。ギリシア史に興味が無くても、エジプト史、ペルシア史、スキュタイ史、フェニキア史などの地中海東部の歴史を学ぶ人には非常に重要な本でもある。おすすめはやはり、第一章で、ヘロドトスがいろいろな民族について考察してる。どれも説話的であるがひじょうに面白い。第二章はエジプトの話がほとんどで、ミイラの作り方まで載っている。他にもレオダニスの玉砕のシーンはおすすめ。


女の平和 アリストパネース 高津春繁 岩波文庫
喜劇 410円 1951  

これは全部読んだ。とっても面白い本。原題はこの話の主人公の名「リュシストラテ」である。アテナイでは長い間ペロポネソス戦争を戦ったものの勝敗を決することができず、とうとうアクロポリスにある、非常用のお金を戦争用に使おうとしたので、これに怒ったギリシア中の女たちが戦争を止めさせるために、アクロポリスに立てもこり、「セックス・ストライキ」を決行。我慢比べとなるが、最後に男たちが折れて、和平を結び、ギリシア中に平和が訪れる。とにかく、下ねたの多さに閉口してしまいそうになる。とくに、若妻ミュリネとその夫のキネシアスのやりとりはすごい下ねたの連続だが、爆笑できる。しかし、18歳未満は読まないようにしよう。


イソップ寓話集 アイソポス 山本光雄 岩波文庫
寓話集 520円 1942  
イソップことアイソポスは、日本人に知られているようで、実はあまり知られていない。読んでみると短編で本当に読みやすいし、わかりやすい。いわゆる日本人におなじみの話から、そうでないものまでいろいろある。古代ギリシアに関することを何も知らなくても読める本である。イソップ寓話集はアイソポスが作ったといわれているが、実は後の時代に作られたものも多く、アイソポスはあくまでも寓話の第一人者であるから、この名があるわけで、すべてがアイソポスの作品でない。

世界の歴史5 ギリシアとローマ 桜井万里子/本村凌二 中央公論社
概説書 2524円 1997  
中央公論から最近でた「世界の歴史」シリーズの一冊。とにかくおすすめ。フルカラーで年表や地図、写真も分かりやすく、内容も分かりやすい。ギリシア史の概説書としてはもっともお勧めできる。他の概説書では、古いのでお勧めできない。

古典期アテネの政治と社会 伊藤貞夫 東京大学出版会
入門書 2578円 1982  
大学の教科書として作られただけあって、内容は概説書よりやや専門的なギリシア史の入門書。内容はほとんどが政治と奴隷にかんすること。特に著者の伊藤貞夫先生が研究されてきたフラトリア関係のことが多い。ただ、フラトリアのことに関しては少々専門的な内容である。概説書を読み終わって、よりもっと学びたい人向けであると思う。楽しんで読めるというような一般向けの本ではない。

古代ギリシアの女たちアテナイの現実と夢 桜井万里子 中公新書
一般向けの教養書 720円 1992  
おすすめの一冊。とにかくわかりやすく、読んでいて興味をそそられる本。とくに女性史に興味を持っている人にはおすすめできる。アテナイの女たちの娘時代、結婚、出産、そして、離婚。現在アテナイの女たちは一般的に家庭に押し込められ、窮屈な生活をしていたといわれてる。その女たちの生活に関する詳しい話がかかれている。

王妃オリュンピアス 森谷公俊 ちくま新書
一般向け教養書 660円 1998  
フィリッポス王を暗殺したのはオリュンピアスだったのか?という問題から、マケドニア王家の女性たちの悲劇的な人生について書いた本。内容的には上の「古代ギリシアの女たち」よりワイドショー的でもっと読みやすい。内容的にはギリシア史に関してほとんど知識が無くても読める。手軽で面白い一冊。

歴史の父ヘロドトス 藤縄謙三 新潮社
伝記/解説本 4369円   絶版
これもおすすめの一冊。「歴史」に関する解説本。わかりやすくて面白い。ただ、分厚い本なので、買うことは難しいかもしれない。私は図書館から借りて読んだ。内容や文章は難しくなく、ヘロドトスの「歴史」をよむまえ、もしくは平行しながら読むのもいいだろう。「歴史」の魅力を教えてくれる一冊。

生活の世界歴史3 ポリスの市民社会 太田秀通 出版社
本の種類 660円    
面白くわかりやすい本。古代ギリシア人の生活について取り上げた本の中では一番わかりやすいとおもう。古代ギリシア人がどういう生活をしていたのかということを一般向きにまとめた本は少ないので、貴重な本であると思う。いわゆるギリシア史の概説書よりこっちの方が断然面白く、ギリシアが好きになるだろう。古代ギリシアが舞台の小説のたいぐいを書きたい人はまずよむのをおすすめする。

世界史リブレット2 ポリス社会に生きる 前沢伸行 出版社
専門書 729円 1998  
薄くて低価格な本で、しかもシリーズ本なのに一般向きではない本。大学のちょっとした教科書なのだろうか?とにかく、古代ギリシアの経済史に興味があるのなら、読みやすいスタイルで書かれているから楽しんで読めると思う。経済史、社会史を知る上では欠かせない弁論がよく引用されているので、やたらと高尚な国政史よりおもしろいとおもう。ただ、概説を読んでから読んだ方がいい本。


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